バーから出て少し行ったところ。そこに小さな空き地のようなところがあった。
いまそこに銀時、キョン。そして朝比奈みくるがいる。
キョンと銀時は襲われている朝比奈みくるを助けて、バーをでてきたところだ。
空はもうオレンジ色に染まっていた。
しばしの沈黙ののち。
「あの、本当にありがとうございました!」
朝比奈さんがまたお礼を言った。
「・・・はぁえらいめにあったぜ・・・」
「ごっ、ごめんなさーいっっ!!」
パフェが十分に食べれなくて、ご機嫌斜めの銀時。
「ちょっ、銀時・・・!すみません、・・大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です。・・・・・あのーあなたは私のこと、知ってるんですか?」
「え、お前ら知り合いじゃなかったの?」
「・・・・・・あー。そうみたいだな、」(一応知り合いなんだが・・・・・朝比奈さんは俺のこともSOS団のことも覚えてなかった。よくわからんが、朝比奈さんにとって俺は初対面らしい。。)
「そうみたいって・・・おまえなぁ;」
「・・・・・・」
あきれる銀時に、顔をふせて黙っている朝比奈さん。
「あの、私仕事がありますから。これで・・・」
「ええ、すみません。勝手に連れ出して」
「結構な騒ぎになってるだろうけどな」
いや、それはあんたのせいでしょ。
朝比奈さんは向き合ってた身体を後ろし、歩き出す。
だが、2・3歩ほど歩いたところで振り返り言った。
「・・・・・あの・・その、名前聞かせてもらっていいですか?」
おどおどと聞いてくるその様子はキョンの知っている朝比奈さんと全く同じもので。
「・・俺ァ銀時だ」
「・・・・・お、俺は「キャンキャン!!」
キョンの言葉は何かの鳴き声によってかき消された。
「・・・・キョン・・・キョンです!!」
キョンは少し期待していた、名前をいうことで思い出すかもしれないと。仮に、これがあいつの力に作られた世界だとしたら、だが。
「そう・・ありがとうございました、銀時さん、キョン君!」
だが、朝比奈さんは思い出そうとするそぶりも見せずに、少し笑顔を見せて行ってしまった。
のと入れ替えに、一匹の犬がキョン達のところに来て這いずりまわる。
「キャンキャン!!」
その犬が吠えた。
「さっきの鳴き声、こいつだったのか・・・」(はぁ、俺は本名は言おうとしてないのに遮るんじゃねーよ・・・)
といいつつ、しゃがみこみ犬の頭をなでる。犬は少し嬉しそうでしっぽを振っている。
「ははは、キョンが本名言おうとするといつもこれだなぁ」
そんなことを知るはずもない銀時は、さっらっという。
「キャンキャン!」
もう一度吠えたと思ったら、
「ま、待ってください、ポチ君っ!」
少し遠くの方から、駆け寄ってくる人。
その人は、キョン達のいる場所へ着くなり、息を整えていった。
服装は、和服。手には僧侶の持つようなものがにぎられていて、黒髪短髪。ほんわかとした雰囲気にどこか、なつかしさを覚える。
キョンのところにいた犬、ポチ君はその声の主のところにいく。
「やっと追い付きました。。」
「・・・この犬、おめぇのか?」
というのは銀時。
「は、はい。すいません、ポチ君が迷惑かけませんでした?」
「いや、迷惑な・・・ん、て・・・」
「どうかいたしましたか?」
「・・・いや、何でもない。(こいつは・・・確か前に会ったことあったような…)」
「あ、あのっ恐れ入りますが、お二人はあのバーにいた方ですよねっ!?」
その人はぐっと寄ってかかってくる。
「そうだけど・・?」
「そっそうですか!・・・お初にお目にかかります。私は、本田菊と申します。この子はポチ君。以後お見知りおきを!」
「俺は銀時ってんだ、んでこっちのひょろってしたのがキョン。」
「・・・・・・(本田菊・・・?ってまさか!あの本田さんか・・?!)」
キョンと菊は以前会ったことがある。
無論、この世界ではないが・・・。あいつが連れてきて騒動になったのだ。いやでも覚えている。
「おーいキョン?どうしたぼーとして。」
「!い、いや。別に・・・。えーと初めまして?ほん・・?」
キョンは、はっとして我に帰り、菊を再び見る。確かに、それは本田菊だ。見た目、口調ともに。
いかし、すこし違うのはその、いつもパッとしなかった目がきらきらと輝いていた。
「さっきのバーでのこと拝見させてもらいました!強いんですね!」
「あー・・・ま、まぁ。」
さっきとは打って変わり、キョンだけではなく銀時も若干困っている様子である。
「あなたたち、旅をなさってるんでしょう!?」
「旅っつーか・・・なぁ?」
「俺には、ふらないでほしいです。」
「・・・・俺らはクエストを引き受けているだけだ。そのクエストの報酬でいろんなとこ行ってまた稼ぐためにクエストを引き受ける。そうやって生きてんだよ。旅人とはちっと違う。」
(あーなるほど。そういうことか。)
キョンは自分の置かれている状況がまた少しわかった。
「・・・そうですか。それでも構いません!私をパーティーにいれてくれませんか!?」
「「はい?」」
それには予想外でひるむ二人。
「・・すみません。突然言われても困りますよね。。仕方ないです、」
うなだれる菊だったが。
「・・あの、これを。お近づきのしるしに・・・」
と差し出したのは、小さめの袋。それを受け取る銀時。
「!!!!はっ!このにおいはもしや・・・!!」
「はい、あのバーでの数量限定のスペシャルケーキです。」
「まじでか!あれ、最後の一個を逃しちまってくやしくてよー!」
「・・・・あの、パーティーには・・・」
「おお、いいぞ。おーけーおーけー!」
といいながらケーキに手をつける銀時。
(ええー!?軽い、軽すぎねーかこの男っ!ていうかなんで本田さんが・・・)
もはやキョンは頭を抱えるばかりであった。
「ありがとうございます!二人とも宜しくお願いしますね」
「キャン!」
菊は笑顔で言う。
「今日はもう遅いですし、宿屋に行きましょうか。」
菊の一言で、3人と1匹は宿屋に向かうことにした。
宿屋で横になるキョン。そこでさっき菊と話したことを思い返す。
「なぁ、本田さん。」
「なんでしょう?あと、菊でかまいませんよ」
「えーとだな。どうして俺たちと組もうと思ったんだ?(おいおい、フレンドリーすぎるだろ?)」
「・・・秘密です」
「え?」
「ふふ・・あえていうならば直感といいますか・・・一目見たとき・・・私はキョン君たちとともにいるべきだと感じたんです。・・なぜだかはわかりませんが。」
「(直感ね・・)・・・俺を初めて見たのはいつだ?」
「・・このタウンにいらっしゃた時からですよ。私は、旅に出たばっかりで・・・なにもかも新鮮で・・・そんなときキョン君たちを見かけたのです。」
「・・・・・・そうか(このタウンについたとき・・・!?ならこの人もなにも覚えてないというのか!?)」
どうなってんだよこの世界!変な生き物は現れるわ、銀時も友達とか言っておかしいわ。
・・・朝比奈さんも本田さんも俺のこと覚えていなかった。
それに見たことも聞いたこともないこのファーストタウンってとこ。
ファンタジーな世界ってのはだいたいわかった。だが・・・不可解な点が多すぎる。
ほんとにあいつの仕業なのか?おれがおかしくなったのか?
あーわかんねぇ!
「!」
そこでふと思い出す。あの、魔物と戦った時、なぜか銃が入ってたことを。
なんであんとき・・・!
キョンは起き上がり、かばんの中をすべてひっくり返して調べる。
そこには、銃のほかに替え玉、それにRPGで使われるような薬がいくつかとあとは生活に必要なもの数点、そして地図だった。
こんなもの、入れた覚えないぞー?あれか、これもあいつのしわざ・・・なのか?
いや、しかしあいつがここまでこったこと・・・・するかもな・・・。
違う気もしなくはない。・・・あいつじゃなくともこういうことする奴は・・・居そうでこわい。
そう思うと心がいたたまれなくなる。とにかく明日もう一度朝比奈さんに・・・ん?
キョンが見つけたのは、鞄の中の奥にあった小さい紙。
取り出してみると、それは、しおりだった。
それを見て、キョンは目を見開く。それはとても驚愕に満ちていて。
「っ!」
その瞬間、キョンはもっていたしおりをぎっと握り締め、宿を飛び出した。
キョンは、自然と目的の場所に足を走らせる。
「はぁ・・・長門、お前なら・・・何か、知ってる、よな?」
そう、願いを込めて言いながら。
next・・・長門の語るこの世界の秘密とは?